「下町ロケット」吉川晃司 「財前部長役のきっかけは無人島サバイバル企画だった」~吉川晃司(ロックミュージシャン、俳優)――クローズアップ~ – 用田 邦憲

 間もなく、デビュー35周年を迎える吉川晃司さん。ミュージシャンとしてはもちろん、近年では俳優としての活躍も目覚ましく、TBSドラマ『下町ロケット』での好演も、その評価をより高めた。帝国重工という巨大企業の部長職にありながら、自らの信念と哲学を貫いていく「財前道生」役は、意外とも思えるキャスティングだったが……。

「どうして僕をキャスティングしたのか、TBSの伊與田(いよだ=英徳)プロデューサーに聞いたことがあるんですけど、前に僕が番組で、無人島でのサバイバル生活という企画をやったのを観てくれていて、『財前はこういう人に違いない』とひらめいたらしい(笑)。不思議なものですね」

 会社の方針に逆らったことで、さまざまな苦難に直面する財前だが、やがてその熱意が、藤間社長(杉良太郎)をも動かしていく。

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日曜劇場『下町ロケット』(毎週日曜日21:00〜TBS系列で全国放送中)

「同年代で、企業に勤めている友人たちからは『現実の世界では、財前みたいな人間はすぐクビになる』と言われました(笑)。でも原作の池井戸(潤)さんもそれを分かったうえで書いているんでしょうね。だから勧善懲悪の痛快さがある。観ている人も、あくどいことをやっている輩が報いを受けるとスッキリすると思うんです」

 現在、3年ぶりの続編が放送されているが、その第1話で、財前はこれまで精魂を傾けてきたロケット事業から外された。帝国重工の業績の悪化で、良き理解者である藤間社長の立場も危うくなっていた。そんな状況にも関わらず、藤間は財前に「諦めるな」と力強く励ましの言葉を贈る。

「実生活で謝るのは苦手だけど(笑)、第1話の財前は、ずっと謝ってばかりでしたね。杉さんとのシーンはよく『時代劇みたいだ』って言われるんだけど、演出のジャイさん(福澤克雄)も狙ってやっているんだと思いますよ。新シリーズの撮影は杉さんと一緒のシーンから始まったんですが、それが僕にとっては、すごく良かった。やっぱりあの方がいらっしゃると、現場の空気がパキッと締まるんです。醸すものが違いますしね」

 続編のキャッチフレーズは「宇宙(そら)から大地へ!」。より具体的には、ロケットから農業機械へ、ということになる。

「このテーマに共感しました。いま、まさに世界規模で考えるべき問題でしょう。僕はもともと農家や漁師の方々を世の中でいちばん尊敬しています。新シリーズでは、そういったところに光を当てようとしているのが、とても素敵だなと。『下町ロケット』が常に日本の技術者のレベルの高さにこだわっている点も、大事なことだと感じています」

 我が道を歩み続けてきた吉川さんと、企業戦士・財前。両者は大きく異なるようで、その“思い”に確かな接点があった。決して諦めなかった財前の、捲土重来の時は近い。今後の『下町ロケット』の展開に、大いに注目したい。

きっかわこうじ/1965年生まれ、広島県出身。84年、映画『すかんぴんウォーク』と、その主題歌「モニカ」でデビュー。88年、ギタリスト布袋寅泰とのユニットCOMPLEXを結成。その後ソロとして、作詞、作曲、プロデュースを自ら手がける。19年春公開の映画『ある町の高い煙突』に出演決定。

INFORMATION

日曜劇場『下町ロケット』
https://www.tbs.co.jp/shitamachi_rocket/

(用田 邦憲/週刊文春 2018年11月15日号)