「仮面ライダー」らしさとは何か–シリーズ屈指の異色作『仮面ライダー響鬼』が突き詰めた特撮ヒーロー作品のリアリティ

2018/11/11 08:24:12

現在、好評放送中の平成仮面ライダー20作記念作品『仮面ライダージオウ』(テレビ朝日系全国ネット)では、50年後の未来世界で「最低最悪の魔王」として君臨するオーマジオウになる運命を知らされた高校生・常磐ソウゴ(演:奥野壮)が、運命に立ち向かい「最高最善の王」をめざすべく、仮面ライダージオウに変身するという物語が描かれている。

ソウゴは一見どこにでもいる平凡な高校生のように見えるが、将来の夢が「王様になる」ことだと公言し、卒業後の進路についても「王様」以外のことを考えていないという、とにかくスケールの大きい”非凡”な人物だった。歴代の平成仮面ライダーの”時代”をめぐり、仮面ライダーの能力を備えたライドウォッチを手に入れていくソウゴ。これからの彼を待ち受ける運命とは……?

ソウゴのように、少年時代から明確に将来の「なりたいこと」を持っている人間は、どのようなことであれ素晴らしい。しかし、たいていの少年たちは学校生活を送りながら、これからの自分に何ができるのか、何をやりたいのかをなかなか見つけ出せずに、思い悩んだりするのではないだろうか。『平成仮面ライダー20作記念 仮面ライダー平成ジェネレーションズ FOREVER』の公開(12月22日)を記念し、平成仮面ライダーシリーズを振り返る企画の第6回として取り上げる『仮面ライダー響鬼』は、そんな多感で繊細な”少年”の目線から”ヒーロー”を追いかけるという、異色の特撮ヒーロードラマが志向された。

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『仮面ライダー響鬼』は、2005年1月30日から2006年1月22日まで、テレビ朝日系で全48話を放送した特撮テレビドラマである。前作の『仮面ライダー剣(ブレイド)』(2004年)が、『仮面ライダークウガ』(2000年)から『仮面ライダー555(ファイズ)』(2003年)までの「平成仮面ライダーシリーズ」の流れを強く意識しつつ、その上で新機軸を盛り込んで作られた作品なのに対し、『響鬼』では仮面ライダーのみならず、特撮ヒーロー作品の「完全新生」をスローガンとし、新しいヒーローをまったく白紙の状態から作り出そうという意欲に満ち溢れた作品となっている。”新しいヒーローを生み出したい”という思いで作られた作品としては、平成仮面ライダーシリーズの第1作となった『仮面ライダークウガ』(2000年)が先に存在するが、『仮面ライダー響鬼』では『クウガ』以上に「ヒーローと怪人の存在する世界」にリアリティを持たせるべく、大胆ともいえる意欲的な設定を多く打ち出した。

本作のヒーロー・仮面ライダー響鬼は、劇中では「仮面ライダー」とは呼ばれず、その姿も歴代の仮面ライダーとは大幅にイメージの異なるスタイルである。その名のとおり「鬼」をモチーフにしており、頭に2本の角が生えている響鬼のマスクには、従来の仮面ライダーに多く見られる「大きな目」のような、顔を構成するパーツがひとつも存在しない。代わりに歌舞伎の「隈取り」を思わせる模様が配置されることによって、顔のように見えるという、かつてない個性的なデザインワークが行われた。武骨でありながら極限までスリムに造形されたボディについても、これまでにないヒーロー像を目指すべく、光の当たり方や角度によって色の見え方が変わる「マジョーラ」という塗料を初めて採用し、鮮烈な印象を残している。

響鬼の独自性は外見だけではない。人間を襲う怪物「魔化魍」に対しては、ベルトに備わっている音撃鼓「火炎鼓」を相手の体に取りつけ、2本の音撃棒「烈火」で叩いて「清めの音」=「音撃」を発し、相手を粉砕する。従来の平成仮面ライダーとは違い、ベルトを変身のために用いるのではない、という点も斬新であった。そもそも、響鬼の変身は変身音叉「音角」によって行われ、仮面ライダーが変身する際に不可欠だった「変身」というかけ声もない。「仮面ライダー」でありながら、どこまで「仮面ライダー的要素」を削り取ることができるか、そして要素を削りながらも「仮面ライダー」らしく見えるポイントとは何なのか……という、仮面ライダーの”極意”を探った作品、それが平成仮面ライダーシリーズにおける『仮面ライダー響鬼』の立ち位置ではないだろうか。

高校受験を間近に控えた中学三年生・安達明日夢(演:栩原楽人)は、屋久島に向かうフェリーの中で不思議な魅力を放つ青年・ヒビキ(演:細川茂樹)に出会った。その後、島の奥深い場所でヒビキと再会した明日夢は、怪物「魔化魍」を育てる童子(演:村田充)と姫(演:芦名星)に戦いを挑む異形の戦士「鬼」の姿を目撃する……。

1000年もの樹齢を持つ”屋久杉”の神秘的ともいえるロケーションや、戦闘時に鳴り響く和太鼓の音、そして数々のヒット曲を持つ歌謡界の大御所・布施明が情感たっぷりに歌い上げる主題歌「少年よ」の素晴らしさなど、一之巻「響く鬼」のもたらしたインパクトの大きさは、放送開始から10数年を経た現在においても変わることがない。とにかく、今までのヒーロー作品からの脱却をはかり、『響鬼』という独自の作品世界を築こうとする工夫と努力が随所に見られたのだ。

一之巻、二之巻で示されているように、本作は明日夢をドラマの中心に置き、彼が憧れる”大人”であるヒビキや、周辺の人々との関係性を努めてリアルに描いていく展開が基本となっている。ヒビキ役には、当時すでに数々のテレビドラマに出演し、確かな実績を備えた俳優の細川茂樹を起用。当時の細川は30代前半であり「平成仮面ライダー」のヒーロー(主役)としては異例の「おじさん仮面ライダー」として、大いに世間の話題を集めた。