『あなたには渡さない』第1話から見逃し注意な“濃厚”シーンの連続

 テレビ朝日系できょう10日にスタートする土曜ナイトドラマ『あなたには渡さない』(毎週土曜 後11:15)。第1話は一般の視聴者を招いてキャストが登壇する試写会が行われ、「#あな渡」をつけてSNSへの投稿を呼びかけていたのだが、「展開が早くて、あっという間でした! ドロドロなのにカラッとしている! これから湿度が増していくのか? 次が早く見たい」「第1話から木村さんと水野さんのバトルが激しく起こってました!最後の方には『どうなっちゃうの?早く次がみたい!』って思えました」などの投稿に、記者も同意の「いいね」を押した。

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 同ドラマは、40代の男女の群像劇を描いた連城三紀彦氏の小説『隠れ菊』を現代バージョンでドラマ化。「決して負けたくない」との思いで戦う女性たちと、その渦中に巻き込まれ消耗していく男たちの激しくも美しい愛憎劇が描かれた原作は第9回柴田錬三郎賞を受賞した名作だ。

 主人公は結婚して20年になる上島通子(木村佳乃)。料亭の御曹司で板長を務める夫・旬平(萩原聖人)のもとに嫁ぎ、専業主婦として2人の子どもを育てる日々。ただ、夫の母である亡き姑とは折り合いが悪かった。そんな通子の前にある日突然、夫の愛人と名乗る女・矢萩多衣(水野美紀)が現れ「ご主人をいただきにまいりました」と告げる。6年前から旬平と関係を持っていたと語る多衣は通子に夫の署名入りの離婚届を突きつけるのだった。しかも夫の料亭は多額の負債で倒産寸前であることも発覚。思いもよらなかった事態に直面した通子は、旬平との離婚届を引き合いに多衣から6000万円を借り、自らが女将となって料亭を立て直すことに。

 「展開が早い」というのは、第1話を観た印象でもあり、出演する木村や水野もインタビューで話していたことでもある。視聴者を置き去りにして行くような“速さ”ではなく、1つひとつのシーンにいろいろなことが“詰まっている”と言ったらいいか…。宣伝では“ドロ沼愛憎劇”“濃厚ラブサスペンス”という文字が踊るが、サスペンスはともかく“濃厚”であるのは確か。1つのシーンが濃くて厚い。だから見逃せない。

 ドラマや映画の1シーンは、登場人物のキャラクター、せりふ、そのせりふを言う役者の表情を含めた芝居、その場にいる人たちのリアクション、さらに美術とか照明とか、BGMとか効果音とか、次のシーンまでの間とか、そういったものが幾重にも重なってできていて、それらがいろんな方向に伸びるフック(時にツッコミどころ)があることで複雑性が増し、多様な視聴者の心が掴んでいくものだと思うが、そういう点において、『あなたには渡さない』の第1話はすごく詰まっている、と思った。

 通子と多衣が初めて顔を合わせる、“待ち合わせ”のシーン。多衣の顔を知らない通子は、菊の花を一輪手に持って待っているという。その姿をじっと、後ろから豪華な花束を持って見ている多衣の姿は、一見ホラーなのだが、その花束とか、着物とか、なぜ立っていたのか、せりふですべて意味があることがわかる。

 通子が持っていた菊は、直前のシーンで、姑(旬平の母)の遺影に供える花瓶に入りきらなかった1本で(ハサミで菊の枝を切る時の効果音も必聴)、このシーンを経て菊はただの仏花から、通子と姑の因縁の象徴になり、原作のタイトルも『隠れ菊』だということを知っていれば、さらに二重三重の意味が出てくるような気にさせるのだ。結果的にそんなに意味はなかったとしても、第1話のつかみとしては効果的だと思う。

 この後、通子は多衣から「ご主人をいただきにまいりました」というキャッチコピーにもなっているようなせりふを浴びせられる。ここでの多衣のせりふはすべて強烈で、含みとか別の意味とかいろいろ考えられるし、水野の表情や、メラメラ炎が見えるよう演出も詰め込まれていて、“濃厚”の極み。たくさん気になるところがあるだろう。

 旬平と通子、夫婦の修羅場のシーンでは、使い古された演出かもしれないが、雷ピカー、ゴロゴロゴロ…と、建物の外も大荒れ。その照明を作るのに、かなり時間がかかって、キャスト陣もだいぶ「待たされた」と試写会の時に話していたが、一つひとつのシーンを現場で作り込んでいる証拠といえよう。さまざまな不倫スキャンダルが飛び交った2018年の最後に、「不倫の是非」を超えたところを“濃厚”に突っ走ろうとする、その心意気にまずはエールを送りたい。