プリキュア生みの親が語るヒットの背景、時代と共に女児の自立を応援し15年

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プリキュア最新作映画を担当した神木優プロデューサー(写真左)と、プリキュアシリーズ生みの親・鷲尾天プロデューサー(写真右)
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 プリキュアシリーズ15年記念となる『映画HUGっと!プリキュア・ふたりはプリキュア オールスターメモリーズ』が10月末から公開中。1週間の興行収入は同シリーズにおいて過去最高を更新するほか、先ごろ“アニメ映画に登場する最も多いマジカル戦士の数”でギネスに登録されたりと盛り上がりを見せている。そんなプリキュアシリーズの生みの親である東映アニメーション・鷲尾天プロデューサーと、今作の映画版の神木優プロデューサーにシリーズ15年の歩みについてインタビューを実施。類を見ないプリキュアというアニメが世の中に果たしてきた役割やヒットの背景、「もっと女性が自由であるべきだ」と語る女の子へのメッセージなど、作り手の想いを聞いた。

【写真一覧】初代から現在まで、歴代プリキュア55人

■親子2世代に成長、当時見ていた女の子が成人する“15周年”を大事に。

――劇場版としてはプリキュア全員出演の“オールスターズ”は2年半ぶりとなりますね。
【神木】プリキュアは人数が多くなって、直近3世代の「プリキュア」の『映画プリキュアドリームスターズ』や『映画プリキュアスーパースターズ』として展開していましたが、プリキュア15周年記念作として、2年半ぶりにオールスターズの復活となります。

――今回、オールスターになった背景をお聞かせください。
【神木】20周年でも50周年でもなく、プリキュアは“15周年”を大事にしたいと思っていました。プリキュアは3~6歳がメインターゲットで、15年経つと5歳の子がハタチを迎えます。将来の事、自分のことを見返したり、いろいろな選択がある、そういった世代にこそ、あの時見てたなと、思い出してもらえればと。そういう想いで今回の劇場版は初代『ふたりはプリキュア』にフィーチャーしています。初代をはじめ、歴代をきちんと観ていただきたいという想いでした。

――ハタチどころか、15年の歳月で母親になって、親子2世代になっているプリキュアファンもいると思います。プリキュアの放送を開始した2004年の前にも、女の子向けのアニメは存在していました。その中でプリキュアのようにシリーズ化したアニメは珍しいですよね。
【神木】プリキュアが生まれた経緯が、反骨精神といいますか、“魔法少女”アニメに対して、肉弾戦で闘うという“アンチテーゼ”でした。生まれた背景にそういう軸がありましたし、継続の一番の理由は、毎年“今”と向き合って描くべきことが変わっていることでしょうか。“続き物”を作るという意識が作り手になくて、歴代のプロデューサーはみんな自分の作品が一番と思ってやっています(笑)。

■時代と向き合い続け、“今”は情操教育要素も盛り込む

――今作の映画のメインでもある最新シリーズ『HUGっと!プリキュア』では、「子育て」がテーマです。映画でもプリキュアたちが“小さく”なってしまうそうですね。
【神木】今作は、宮野真守さんが演じる敵キャラクターのミデンがプリキュアたちの大切な思い出を奪っていき、思い出を取られたプリキュアたちが“小さく”なってしまいます。プリキュアシリーズでは、自分自身と向き合うってことは大切にしてきました。友達や家族との思い出など、今作は自分にとって大切なものを失うということはどういうことなのか、お子様にも視覚的に表現したかったんです。

――“今”は何と向き合っているのでしょうか。『HUGっと!プリキュア』では赤ちゃんが登場したり「男の子だってお姫さまになれる」「女の子だってヒーローになれる」といった演出がありますね。
【神木】一つ挙げられるのが、“多様性”じゃないでしょうか。15年前にも増して「こうあるべきだ」と課すことが今の時代に即していないと思うことが増えていると、個人的にも感じています。現シリーズ主人公・野乃はなちゃんの「私のなりたい私じゃない」というセリフがありますが、それが今っぽくてプリキュアらしいと思っています。自分がどうしたいのかという“過程”で闘うことになる。でも、“多様性”という言葉にするとまとまってしまう。

――“多様性”は各方面で話題に上がっている現代的なテーマですね。でも、それを“認めることを押し付けちゃう”のもまた、違うわけですね。
【神木】そうですね。一つ一つの判断の中に私たちにその考えが根付いてきていることを自然と盛り込んでいきたいですね。“なりたい姿”は人によって違います。お子さま向けのメッセージなのですが、もしかしたら子育て中のお母さん世代の大人にも響いているのではと思います。

――映画では、初代『ふたりはプリキュア』と最新作『HUGっと!プリキュア』は、どのように絡み、描かれるのでしょうか。
【神木】例えば…今回の映画を作るにあたって。一番最初から我々が話していたことが、ハグしているイメージです。初代のキュアブラックはアクションでやっつける爽快感。現シリーズの“はぐプリ”はハグで敵を癒やすんです。

――時代の流れを描く対比としても非常に分かりやすいですね。癒やしの力で闘う母の姿を描くという、情操教育要素を含んでいるのも印象的です。
【神木】「子育て」という素材に対して、TVシリーズでは劇中で子どもが生まれる話があったり、主人公の野乃はなちゃんとお母さんの会話があったり、映画でもはなちゃんが赤ちゃんと向き合う中で孤独を感じてしまうシーンがあります。

 例えば育児の中で孤独を感じるお母さまも世の中にはきっといると思います。視聴者がはなちゃんの選択に対してどう考えるのか、また、現実世界の人と同じ悩みを抱えるはなちゃんがそれをどう乗り越えていくのか。2方向の見方が出来ると思います。多様性の中で、こういう演出が生まれたということだと思います。

■実はプリキュアは…戦隊ヒーローや仮面ライダーの“東映イズム”が凝縮

――プリキュア生みの親の鷲尾さんにお聞きします。シリーズ誕生の背景や、立ち上当初の想いについて教えてください。
【鷲尾】長く続いてきた『おジャ魔女どれみ』、『明日のナージャ』といった女の子アニメの枠を変えようという時に、当時たまたま私が担当して、新しい女の子アニメを考えていました。西尾大介監督と話して「変身して闘う」「派手なアクションを」といって始まったんです。自分より圧倒的に大きなものに徒手空拳で立ち向かう、その必死な感じを『ふたりはプリキュア』で描きました。

――そうして、ヒットした翌年は『ふたりはプリキュアMax Heart』で続編を描き、さらに名前自体も変わって一人歩きするようになって15年が経ちます。シリーズ化していく際のターニングポイントとなった作品は?
【鷲尾】たまたま1年目に受け入れてもらったので、2年目は必然的に継続し、それも受け入れられました。通常だと3~4年継続して、失速したら別番組を立ち上げるのがこれまでの流れの中で、3年目をどうするのか議論になりました。私は、毎年新しい子が作品の世界に入ってこられるようにしたかった。“続編”は人間関係が複雑になって、途中からは入りづらくなってしまう。

 そこで、毎年変わって、新しい子どもが毎年楽しんでくれているものとして参考にしたのが、東映のスーパー戦隊シリーズや仮面ライダーでした。タイトルは一緒だけど、中身は毎年違うことをきちんとやっている。あれを女の子のコンテンツとして形にしたい。そうして生まれたのが3年目の『ふたりはプリキュア Splash☆Star』です。

――プリキュアを冠しつつ、新しいシリーズとして展開した“挑戦の3年目”だったんですね。シリーズの存続が危ぶまれた時期はあったのでしょうか?
【鷲尾】挑戦的アプローチだったんですが、その『ふたりはプリキュアSplash☆Star』当時は、カード筐体でファッショナブルな着せ替え遊びができる女児向け作品が大流行して、そちらにほとんど流れてしまったんです。もう1年「ふたりはプリキュア Splash☆Star」の続編をやってプリキュアを閉じるか、もう1回新たな挑戦をするのか、選択を迫られた時に開き直って「ふたり」を外して5人のチームにしたのが『Yes!プリキュア5』です。これが幸いなことに子どもたちに受け入れられました。現在の流れは、『5』からの系譜ですね。

――5人といえばまさにスーパー戦隊のイメージですね。プリキュアはまさに“東映イズム”で作られたコンテンツだったんですね。
【神木】次年度の自分たちの作品をどうするのか毎年考えていますから、去年の作品は特に意識しますね。その中で、「プリキュアってこんなもんでしょう」と思われる展開だけにはしたくないという想いは今も皆が持っていると思います。

■強さから慈愛まで、女子の自立を後押しし15年「自由であるべき」

――15年の変化や、女の子の文化で果たしてきた役割、プリキュアをプリキュアたらしめてきた“核”となる部分は何でしょうか?
【鷲尾】初期に監督と話していたことがあります。子どもは成長していくにしたがって、女の子(女性)のほうが“枷”が増えていくような気がしています。そういう世の中はどうなのか、という想いはありました。初期プリキュアのイメージに重ねていたのが、女の子が自分の足で凛々しく立つこと。自分の意思で決める事。自分の夢は自分で努力して掴むこと。私の手が離れた後も、連綿とそれをきちんと踏襲してきたから、プリキュアのイメージが世に伝わってきたのかなと思います。

――初代が世に出た2004年は、コギャル文化の名残があった時代であり、女の子が世の中を回し始めてきた時代だったと思います。プリキュアとも連動していたのが興味深いですね。
【神木】初代のキャラクターを見ると、眉毛が細くて鋭くて、確かにギャルっぽいんです。時代の変化を感じます(笑)。

【鷲尾】自由であるべきだという話は当時からずいぶんしていました。子どもに「女の子はこうであるべきだ」と刷り込みたくなかったので、台詞も気を付けました。「女の子らしくしなさい」「男の子だから泣いちゃダメ」というようなセリフはプリキュアシリーズには一切入れていません。

 でも世の中を見ると、まだ女性が苦労している部分も多いですよね。私たちが発信してきたメッセージを見て育ったかつての女児たちが社会に出た時に、もしかしたら少し変わっていたら嬉しいな、という気持ちはありますね。

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