焦点:米制裁下のイラン、経済崩壊を回避できるか

[ダブリン/ロンドン 8日 ロイター] – イランは米国の経済制裁を受け、景気後退に見舞われるだろうが、経済が全面的に崩壊する事態は避けられる見通しで、原油価格上昇や米国と他の関係国にすきま風が吹いていることがその理由だ──。各国政府当局者や専門家はこうした見方をしている。

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 11月8日、イランは米国の経済制裁を受け、景気後退に見舞われるだろうが、経済が全面的に崩壊する事態は回避できるか。テヘランで2012年1月撮影(2018年 ロイター/Raheb Homavandi)

ある欧州の外交官は「イランを取り巻く状況は2016年以前よりも良い。なぜなら原油価格が高く、米国は国際的に孤立しているからだ」と話した。

イランは2016年初め、核開発制限を受け入れる国際的な合意の枠組みの下でいったん制裁を解除されたが、今年5月にトランプ米大統領が核合意離脱と制裁復活を表明。特に影響が大きい原油の禁輸と金融制裁が5日に発動された。

トランプ氏の狙いは、イランに核開発でより厳格な制限を設け、弾道ミサイル計画を撤回させ、イエメンやシリアなどの紛争地域における同じイスラム教シーア派の武装集団への支援をとりやめさせることだ。

しかし以前の制裁を有効に実施し、イランに核開発制限を認めさせた国際的な結束は、トランプ政権発足とともに消えてしまった。以後、米国と同盟諸国は、貿易から集団安全保障に至るあらゆる問題で対立している。

実際、米国以外で核合意に署名したドイツ、フランス、英国、欧州連合(EU)、ロシア、中国はそろってトランプ政権の核合意離脱を批判。EUは、米国の制裁下でもイランとの貿易取引が可能になるような仕組みを導入する準備を進めているところだ。

別の外交官は「イランにとって厳しい局面にはなるが、経済はさまざまな理由から耐え抜いていくだろう」と述べ、当事国の1つであるロシアも欧米の制裁を受けていることや、イランの宿敵のサウジアラビアが国内の金融・政治問題に掛かりきりになっている状況、米中貿易摩擦などを挙げた。

石油メジャーから商社、海運会社まで外国企業が米国の目を恐れてイランとの取引から手を引きつつあるのは間違いない。

それでも依然として相当な量の原油が輸出されつつあるので、イランが来年恐らく景気後退に陥るとしても経済は崩壊しないはずだ、とフィッチのソリューションズ・アナリスト、Andrine Skjelland氏は予想する。

同氏はロイターに、イラン政府はなおかなりの外貨収入を確保し、生活必需品の輸入に補助金を供与してコストを引き下げ、ある程度国内の物価上昇を抑え続けるとの見通しを示した。

イラン当局は、買い手を引き付けるために原油の値引き販売もやむを得ないかもしれないとの考えを示唆している。同国の貿易に関係しているある当局者は「石油収入は減っても国家運営にはまだ十分な額になる。市場価格より1ドル低くすれば、いくらでも買い手はつく」と主張した。

また当局は、食料や医薬品などの輸入により安いレートでドルを販売する外貨センターも活用している。

IHSマークイットのシニアエコノミスト、パトリック・シュナイダー氏は、短期的にはイラン経済が制裁のショックを吸収できないかもしれないとみている。

同氏はロイターに「(当局が)経済の下押し効果を和らげる取り組みをしているにもかかわらず、向こう半年から1年は不確実性が広がり続ける」と語った。

国際通貨基金(IMF)も、イランの成長率は石油収入の目減りで今年がマイナス1.5%、来年は同3.6%になると予想した。

とはいえイラン側は意気軒昂で、トランプ氏は核合意を否定するという点で孤立化し、原油は値上がりを続け、米国が石油禁輸適用を8カ国・地域に対して除外したことなどを自分たちのプラス材料だと強調する。

あるイラン政府高官は「たとえイランの原油販売量が日量80万バレルに減ったとしても、経済のかじ取りはできる。だが実際にはもっと多く出荷しており、わが国の経済は崩壊からは程遠い。国家予算が想定している原油価格は1バレル=57ドルで、足元は75ドルを超えている」と述べた。

イラン最高指導者ハメネイ師の側近は「米国の禁輸除外がなくても、われわれは原油を売り、制裁をすり抜けていく。味方になってくれる国は多く、米国は何もできない」と言い放つ。

確かにイランは過去の国際的な制裁に対しても相当な耐久力と対応力があると証明してきており、今回は同じように動けないとみなせるだけの材料は乏しい。

(Parisa Hafezi、Jonathan Saul記者)

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