稀勢の里 あっさり黒星 左差しこだわり…焦り先立つ

御嶽海(左)が押し出しで稀勢の里を破る

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 進退の懸かる横綱稀勢の里は小結御嶽海に押し出されて黒星スタート。昨年秋場所千秋楽から、不戦敗を除いて6連敗となった。

 全休明けの2横綱は白星発進。白鵬が再小結の妙義龍をはたき込み、鶴竜は平幕栃煌山を突き出した。

 3大関は平幕相手に総崩れ。高安は逸ノ城に突き出され、豪栄道は錦木の上手投げに屈し、栃ノ心は北勝富士に押し出された。先場所で初優勝した新関脇貴景勝は正代を突き出した。

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 進退を懸ける場所でいきなりの黒星はもちろん重い。しかも、左差しにこだわって攻め手を封じられた。結果が出なかった昨年をなぞるような負け方もまた重い。あっさりと土俵を割った稀勢の里に、復活を願うファンの落胆がため息となってのしかかった。

 踏み込みは互角で、左はのぞいた程度。すぐに強引に出たが、腰高の姿勢では低く耐える御嶽海を崩せなかった。「御嶽海がうまく下からおっつけた」と八角理事長(元横綱北勝海)。単調な攻めが、さばきのうまい新鋭にあっさりはじき返された。巻き替えられてもろ差しを許すと、もう抵抗できなかった。

 取組前に八角理事長は、稀勢の里の勝機を広げるには「押し込んでからのまわしだろうね」と指摘した。今場所前の稽古では貴景勝を相手に突き押しを磨いた。左一辺倒から攻めの幅を広げる狙い。「いい稽古ができている」はずだったが、本場所では焦りばかりが先に立つ相撲だった。

 混在する不安と期待が、大きく不安に振れる敗戦。昨年11月に過去例のない激励を決議した横綱審議委員会の山内昌之委員(東大名誉教授)は「言葉になりませんね」と嘆き、北村正任委員長(毎日新聞社名誉顧問)は「(場所を)全うできるか不安になる」と心配した。2日目は、この日高安を押し返した体重226キロの逸ノ城。強引な攻めが通じる相手ではない。

 横綱になって以来、初日に負けた5場所はすべて途中休場している。支度部屋ではいつものように多くを口にせず、ここからという気持ちかと問われて「うん、そうだね」と小さな声で答えた。気持ちは切れていないが、状況はこれまで以上に厳しい。相撲人生の土俵際。稀勢の里は片足を俵にかけながら、培ってきた底力で耐えようともがいている。 (海老名徳馬)