EU離脱協定あす採決、アイルランドとの国境問題は

 3月末に迫ったイギリスのEU離脱の詳細を定めた離脱協定が15日、イギリス議会で採決にかけられますが、可決されるめどは立っていません。最大の障害がアイルランドとの国境の問題です。

 EU加盟国であるアイルランドで酪農を営む、マクモナグルさん。

 「搾った2200リットルの牛乳は北アイルランドの加工場に運びます」(酪農家 マクモナグルさん)

 牧場はイギリス領北アイルランドとの国境のすぐ近くです。地元よりも高い価格で牛乳を買い取ってくれるため、北アイルランドの加工所に出荷しています。

 「今、トラックが国境を越えて北アイルランドに入りました。ただ、国境を感じさせるものはありません」(記者)

 イギリスがEUを離脱すれば、この国境の道路はEUとの境界になり、税関検査などが必要になってきます。

 「国境でトラックが1時間以上待たされ、牛乳がダメになってしまう」(酪農家 マクモナグルさん)

 影響は経済だけにとどまりません。北アイルランドでは、1960年代から90年代にかけて続いた親イギリスの住民と親アイルランドの住民との間の紛争で3600人以上が死亡しました。

 「突然、閃光が走って・・・。ほんの一瞬の出来事が私の人生を変えてしまいました」(ノエル・ダウニーさん)

 ダウニーさんは29年前、車に乗り込もうとした際、仕掛けられていた爆弾が爆発し、左足と利き手である左手の小指を失いました。

 「今でもあの時の悪夢をみます」(ノエル・ダウニーさん)

 親友は敵対する武装組織に殺害されました。その後、1998年に和平が成立し、国境検問所は取り除かれました。しかし、北アイルランドの中では和平合意後も対立してきた住民の居住区を隔てる壁が今も残り、壁画に兵士が描かれるなど、感情的なしこりは残ったままです。

 「子どもたちにあんな経験をさせてはダメです。物理的な国境なんて誰ももう見たくありません」(ノエル・ダウニーさん)

 和平維持のため、イギリスとEUは検問など厳しい国境管理を行わないことでは一致していますが、具体的にモノの行き来をどうチェックするのか、解決策は当面、先送りされています。離脱後も解決策がみつかるまでは、EUの関税同盟にイギリスが丸ごと残るという選択肢が15日、採決される協定に盛り込まれ、これが離脱強硬派からの批判を招き、議会の承認を困難にしています。

 最大の障害と言われる国境のそばで、人々は採決を見守ります。(14日14:12)