国民投票の再実施に現実味【フィスコ・コラム】

イギリスによる欧州連合(EU)離脱が混迷を極めるなか、取りうる選択肢が残り少なくなってきました。議会採決で離脱は2カ月あまり延期されることになりましたが、解決策は見出せるでしょうか。現時点では国民投票の再実施しか道はなさそうに思えます。

イギリス議会はメイ政権が提出した法案を採決し、1月に否決された合意案の修正版を3月12日に反対多数で否決しました。翌13日には政府が提案した合意なき離脱の提案を、やはり反対多数で否決します。そして14日には、3月29日に予定していた離脱を6月まで延期する法案を賛成多数で可決。最悪シナリオの強硬離脱が避けられたため、国際金融市場には安堵が広がり、外為市場では円売りに振れました。

今後の現実的なシナリオを考えてみると、実質的に道は1つしか残されていないように見えます。これまでは、1、EUからの強硬離脱、2、解散・総選挙、3、EU離脱を問う国民投票の再実施、の3パターンが考えられていました。現在は1が消えたことで、残りは2または3となります。本来、離脱を前提とした総選挙であれば保守党はハード路線、労働党はソフト路線でそれぞれ政策を競うのが筋でしょう。

ただ、ブレグジットに関しては「離脱」「残留」は党派で明確に分かれているわけではありません。また、最大野党の労働党は国民投票の再実施を主張していますが、労働党が勝利した場合は社会主義的な政策に変わるリスクもあります。それに、そもそもイギリスは首相の解散権が制限されており、先の総選挙からまだ2年も経過していないため議会の同意を得るのは困難とみられます。

とはいえ、現状EUとの関係や国内政治の行き詰まりは誰の目にも明らかです。中国を起点とした世界経済の減速傾向は鮮明になり、その波がすでにユーロ圏に広がっています。現時点でメイ首相は否定的ですが、迷走の続くこの問題を早急に断ち切る必要があり、野党対策としても再投票を検討せざるを得ないと思われます。親EU派と反EU派が互いに譲る気配はないものの、再投票に消極的ながら同意すると思われます。

もちろん、再投票の結果を敗者側がただちに受け入れるかは別問題です。仮に「離脱」の勝利なら2016年6月の最初の投票と合わせ2勝となり、「合意なき」を含めた明確な離脱が求められます。しかし、「残留」が勝った場合は3年前の投票の意義が問われ、政府は説明できなくなります。加えて、敗れた「離脱」支持者が「3回目」を実施しなければ公平ではないと主張する可能性があります。

EU離脱を不服とする「残留」派の主張により、まったく同じテーマで選挙をやり直す前例を作れば、2回目では負けた「離脱」派が再投票を求めても何ら不自然ではありません。そうなると、延々と同じテーマで国民投票が繰り返され、民主主義の視点でもおかしなことになります。イギリスのEU離脱論議は、安直な国民投票は後始末が大変との教訓になったと言えそうです。

※あくまでも筆者の個人的な見解であり、弊社の見解を代表するものではありません。

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